2019年特別号「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前にマンションの災害対応を考える」

マンションへの民泊やオリンピックによる旅行者増に備えましょう

1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピックから56年。2020年に再び東京でオリンピックが開催されます。外国人観光客の増加に伴う経済の活性化、インフラ整備による雇用促進や生活環境の改善、スポーツの発展、日本の国際的価値の高まりなど、東京オリンピック・パラリンピックには様々なプラス面の効果が期待されています。一方、テロなどを含む治安の悪化も心配されており、政府は東京オリンピック・パラリンピックを視野に「世界一安全な日本創造戦略」を閣議決定し、サイバー犯罪、国際テロ、組織犯罪、外国人の不法滞在対策などの治安基盤を強化しようとしています。

各マンションでも開催期間中および開催前後の治安維持を意識した取り組みが求められます。例えば、マンションの一室を民泊として利用した外国人が引き起こす住民や近隣とのトラブルも多く発生する恐れもあります。その一つがごみや汚れの問題です。実際に、退去時に立会が行われない民泊では、退去後の部屋が汚されていることが少なくありません。壁や床に液だれのシミが残り、室内やバルコニーにごみが散乱していることもあり隣戸への悪臭の被害もありました。さらに、ごみ集積場に古いスーツケースや、家電製品が入っていた空の段ボールなどが乱雑に放置されていた事例もあります。清掃費用や処分費を請求しようにも本人は帰国してしまい、連絡がつかないということも珍しくありません。

民泊でなくても、マンションの敷地内に通行人がごみを捨てることもあります。せっかく入居者がルールを守ってごみを出しても、部外者がごみを不法投棄していれば、他のごみを引き寄せマンションの価値やイメージが低下するおそれもあります。不法投棄は明らかな犯罪ですので、頻繁にごみが投棄されるときは、警察や行政に相談しましょう。マンションとしても、予防対策として監視カメラの設置・夜間照明の設置•ごみ捨て場に鍵を取り付ける・注意喚起の警告文を多言語で作成するなどの対策を検討しましょう。

周囲の建物からの盗撮や不法侵入および窃盗に普段から注意しましょう

マンションの周りに高い建物がある場合には盗撮にも注意しましょう。高層階だからカーテンをつけなくても誰にも見られないと思うのは間違いです。遠くのマンションやホテル、ビルから性能の高い双眼鏡や望遠鏡で覗かれているかもしれません。自宅にいる時は必ずカーテンを閉めて、部屋の中を見られないようにしましょう。防犯に適しているカーテンの素材として注目されているのが、「ミラーレースカーテン」です。布地が鏡のように光沢加工されていて、外から室内が見えてしまうことを避けてくれます。一般のカーテンとは違って、外からの光を通す性質を持つので、閉めている状態でも室内が暗くなることはありません。こういった製品を活用して常にカーテンを閉めておくことを習慣にしましょう。

外国人による犯罪が増えると便乗して日本人による犯罪も増えることも考えられます。室内への不法侵入および窃盗の被害に遭わないように施錠の徹底および補助鍵の設置にも取り組みましょう。下見で狙われないために、郵便受けの工夫も必要です。名前を出すことに抵抗を感じるのであれば、ローマ字表記にして一見で分からないようにする、難しく読みにくい名字はあえてそのままで表記するなど、推測しにくいようにするといいでしょう。

同様に玄関の表札も同じ視点でひらがなやアルファベットで名前を表記しておくことをお勧めします。防犯シールを玄関あたりに貼っておくこともよいでしょう。そうすれば外部から侵入しようとしている人に、「監視されている」ということを思い込ませることができます。防犯シールは通販やホームセンターで購入することができるので、比較的簡単にできる防犯対策です。

オリンピック中の自然災害を想定した対策が求められています

さて、ここ近年毎年のように地震、大雨や台風などによる洪水や土砂災害、高潮などが発生し多くの被害がでています。平成30年7月豪雨では200名を超える死者・行方不明者が発生するなど、各地で甚大な被害が発生しました。開催期間中に災害が起きることも想定しておかなければなりません。

国は「安全・安心な都市の実現」するために、組織委員会、国、東京都等の連携を強化し、危機管理体制の構築とともに首都直下地震対策についても防災情報を多言語に対応するなど、海外からの来訪者への対応の強化を図ろうとしています。また、東京都では2020年度までに目指すべき都市像として、地震、風水害といった自然災害のリスクに常にさらされている中で、都民・地域、企業及び行政の取組を通じて、「世界一安全・安心な都市」にふさわしい災害対応力を備えるための取組を示しています。

開催中に首都直下型地震が起きれば、安否確認、避難誘導、救出救助に伴う各国の要人、選手、旅行客に対して多言語の対応が求められます。非常食の提供も宗教等に配慮しなくてはなりません。もともと首都直下地震では避難所に住民が入りきらない、帰宅困難者の一時避難施設不足など被災人口が多くてどうにもならないという問題が指摘されていましたが、開催中は1日に数十万人という外国人が東京に滞在するのですから、混乱は避けられないでしょう。救助拠点、物資輸送拠点の場所もオリンピック・パラリンピックの関連施設として使用されているので、県外からの支援者も支援物資も入ってこられない、渋滞で移動もできないという状況も考えられます。

このような問題に対して各マンションですべきことは、居住者の自助・管理組合の共助で災害に対して自立した対応を講じられるように備えておくことです。建物の耐震性の確保はもとより、室内の安全対策、行動シミュレーション、備蓄、応急手当や救助の技術の習得、災害や安否情報の入手・発信方法を確立し、そのうえで外国人を含む旅行者への支援などに目を向けて対策を講じましょう。外国人に対してどのような支援ができるかについてもそれぞれの立場で考えておくことが東京オリンピック・パラリンピックを楽しむ、もう一つのカギとなることでしょう。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。

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