2021年4月号「熊本地震から5年」

熊本地震は,新耐震基準の多くのマンションが被災しました。

平成28(2016)年に発生した熊本地震から5年。熊本地震は最大震度7が2回発生した揺さぶりにより旧耐震基準だけでなく、新耐震基準を含めて多くのマンションが被災しました。ピロティ形式の1階駐車場の柱が破損し1階を押しつぶした形で全壊したり、エキスパンションジョイントが破損したり、地盤の影響で建物の傾きなどの被害がありました。

建物が損壊すると危険個所または建物への立ち入り禁止措置から始まり、住民が避難しても連絡が取れるように緊急連絡網の作成、罹災証明の取得、保険の査定、管理費等の徴収停止、公共料金の解約、理事会、説明会、総会等の会議運営、決議、申請、契約、残余財産の清算などすべきことは山ほどあります。取り壊して建て替えか補修して住むのかによってその後の生活は大きく変わります。

過去の災害の被害状況や復旧復興を学びましょう。

マンションの防災対策として、防災マニュアルの作成や充実した防災備蓄はもちろんのこと、災害が発生した際に、建物が被害無・軽微~大破までどのような被害を受けるのかを想像し、いち早く落ち着いたマンションライフに戻れるまでの流れを知っておくことは大切です。とくに、過去の災害の被害状況や復旧復興までの歩みを知ることは、落ち着いて対処するための有益な知識になります。たとえば、廊下の外壁(雑壁)の損傷が見た目にひどいと、もう住めないと動揺してしまいがちですが、過去の事例からも建て替えではなく補修工事で同じマンションに住めることもあります。こうした事例は、インターネットで簡単に検索することができます。

そして、建物被害だけでなく災害発生後は住民の安否確認、災害対策本部の立ち上げ、救助救出、トイレ、水や物資の調達、ごみ対応に追われますが、過去に被災したマンション住民の方がどのような点に苦労されたのかを知り、マンションで作成されているマニュアルが実践的な内容になっているかを確認し、最新の教訓を踏まえた内容にアップデートすると良いと思います。

熊本地震から5年で災害対応の検証やマンションの復旧復興事例や調査報告書もまとめられてきていますので、ぜひこの機会に様々な資料を見て防災力向上に役立てていただきたいと思います。

様々な報告書を見て感じるのは、マンションが被災した時に大きな影響を及ぼすのが居住者間の良好な関係です。平時からの信頼関係やコミュニティが災害時に全ての活動を円滑に進める礎になることは間違いないようです。その点も感じ取っていただき、マンション居住者同士の交流を促進しましょう。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。