2017年6月号「救出・応急救護・搬送訓練」

一般的な耐震構造の高層建物では、長周期の地震の揺れの影響で室内の什器類の挙動が大きくなる傾向があります。つまり、家具や家電製品がしっかりと固定されていないと、それらが部屋中を走り回る凶器となることが考えられます。背の高い家具だけ固定していても、低い家具を固定していない環境であれば、あらゆるものが移動することで、居住者が負傷したり閉じ込められたりする危険性が高くなります。

マンション居住者が負傷や閉じ込めに遭い、消防も警察も行政も手が足りず救助に来られない最悪の事態を考えて、マンション独自の救出・応急救護・搬送訓練を実施しましょう。

安否確認訓練で迅速に救助する体制を整えましょう

2017年4月号で紹介した安否確認訓練の際、負傷者または閉じ込めなど救助を要する住戸の情報をもとに、要救助者の状況、建物の被害状況や救助者の人数を鑑み、誰から優先して救助に当たるかを決めます。このときに、判断が遅れないように優先して救助する人を判別する基準を作っておくと良いでしょう。災害医療のトリアージを参考にして、マンションで保有している資機材と支援側の救助能力を鑑みながら、救える命から救うという考えを参考にすると良いかもしれません。

さて、訓練の際に停電でエレベーターが停止している状況で、検討すべきは資機材や支援者がどこに存在しているかです。地上階に存在していて、要救助者が高層階にいる場合、駆け付けるだけで支援者の負担は大きくなりますし、貴重な時間を移動にかけてしまいます。できるだけ近くの人に救助をお願いするように、無線機やトランシーバー等を活用して情報を共有し、資機材も一定の階間隔で設置するなどの工夫をして、迅速に救助する体制を整えましょう。

被害の状況により救出作業も変わってきますが、救出機材の使用方法、安全確保の方法、救出作業の進め方等を知るために、業者や消防の方からレクチャーを受けましょう。救助中にケガをして2次災害にならないためにも、資機材の取り扱い知識を得ることは重要ですし、支援者を防護するヘルメット、作業用手袋、ゴーグルなどの装備も準備されているか確認しましょう。また、玄関ドアが開かないときはバルコニーからの救助になりますので、窓に対してけがをしない侵入方法の説明も受けましょう。

救出後の対策も訓練で確認しておきましょう

さらに、救出後の応急手当や医療機関の搬送先や搬送方法についても訓練で確認しておきましょう。日本赤十字社や消防機関などが行う救命講習や応急手当指導員講習などを受講して必要な技術を得るとともに、マンション内で手当てをする救護所をどこにするのか、手当てする資材の量や品目は十分か、傷病者に苦痛を与えず安全に搬送するための手段についても、車や台車の調達など搬送先までの距離等を踏まえて検討しておきましょう。

訓練の応用としては、廃材などを利用して倒壊物に見立てたものを作り、そこから救出するという想定で救出訓練をしてみましょう。ジャッキやバール以外にも、身近にあるものを利用するなど、臨場感をもってさまざまな事態に対応できる力をつけましょう。

専門的な知識や技術を要するこうした訓練を実施する際には、事前にマンション居住者に専門家や技術者がいるかを確認しておき、積極的に協力してもらうと良いでしょう。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。

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