2020年12月号「マンションにおける感染症対策」

2019年の12月に中国の武漢市で感染者が発生し、世界保健機関(WHO)に報告されてから1年。日本では2020年の1月に感染者が出てから今日まで、瞬く間に感染者が急増し、世界各国では感染に伴う死者数も急増しています。日本でも、感染者数が横ばいだった先月からGOTOキャンペーンによる外出、移動の機会が増えたこともあるのでしょうか、感染者数が再び増加しています。このようにいまだ収束が見えない状況にあるなか、今月はマンションにおける感染症対策について触れたいと思います。

マンションでも、共用部などで様々な感染症対策が実施されました。

4月に感染者数が1万人を超え、緊急事態宣言以降各マンションではマスクや消毒液が不足するなか、試行錯誤で感染症対策を実践されています。基本的には共用部の多くの方が触れるスイッチ、レバー、ドアノブ等の定期的な消毒、共用施設における利用制限や利用する際のマスク着用や30分毎の換気などコロナ禍における共用施設の利用についてルールを規定しています。

とくに、多くの方が頻度高く利用するエレベーター内では、マスク着用・会話の禁止・人数制限(間隔をあけるために立ち位置にマークを設置)など様々な対応をされており、コロナ感染防止のためにパーテーション・消毒液・マスク・手袋・フェイスシールド・ハンドソープ・ペーパータオル、足ふみ式蓋つきゴミ箱などの備品を揃えたマンション管理組合も多かったことでしょう。

利用する消毒液の成分特性を把握して、うまく活用しましょう。

ここで、注意していただきたいのが消毒液です。一般にアルコールは濃度70%以上95%以下(高すぎでも低すぎてもダメ)が消毒に有効とされています。次亜塩素酸ナトリウムと比較して人の皮膚や粘膜への刺激が少ない一方で、アルコールは揮発性が高く引火の可能性があるため、空間噴霧は絶対にしないなど、火気への十分な配慮が必要です。またアルコールは揮発性の物質であり、一般的な容器では長期間有効な濃度を保てないという難しさがあります。安定して購入できる今こそ大量に買って災害に備えようとしているマンションは、アルコールが長期保存に向いていないということにもご留意ください。

さらに、アルコールアレルギーや肌の弱い方、20歳未満の方がマンションにいる場合にはアルコール消毒を強要しないように心がけましょう。

次亜塩素酸ナトリウムは、消毒効果も高いため物の表面・床や壁を消毒するには効果的ですが、皮膚への刺激が強いため直接手指で触れないよう注意しましょう。また、酸性溶液と反応し毒性の強い塩素ガスを発生させるため酸性物質との混合は禁忌です。

トイレでの感染にも、各家庭で対策を講じましょう。

さて、あまり知られていないことですが、コロナウィルスの一つの特徴として呼吸器病を起こすことは知られていますが、消化器病を起こす病原体でもあります。鳥取大学名誉教授・獣医学博士の大槻公一先生のお話によると、座薬はお尻から入れて体内に効果をもたらすように肛門はタンパク質を吸い込む機能があり、ウィルス感染が起きる可能性があると言われています。不特定の方が利用するトイレでは便器はもちろんのこと、トイレ全体の消毒をして感染を防ぐことが重要です。つまり飛沫感染を意識してマスクをするように、トイレからの感染にも留意して対策を取ることが求められます。

とくに、災害時には断水して衛生環境が悪化するのでマンション内でも居住者に共有のトイレではなく、各家庭においてトイレ対策を万全にしておくことを周知しましょう。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。