2021年3月号「災害時の外国人対策」

入手できる情報が少ない、外国人の立場を考えましょう。

コロナで外国人の旅行者はほとんど見かけなくなりましたが、オリンピックパラリンピックが今年開催されれば訪日外国人も増えてくるでしょう。考えたくないことですが、開催期間中に災害が起きることもあるかもしれません。今回は、災害時の外国人対策を考えてみたいと思います。

外国人に対する防災・減災対策の中で、まず大切なのが外国人の立場を知るということです。外国人旅行者や短期滞在の方の多くは日本語が話せないことや、日本の観光地以外の情報をもっていないことも少なくないということです。その点からも災害が起きると要支援者となりうる存在です。日本に長期滞在している外国人であっても、自国で地震が起きない場合、日本は地震大国と知っていても実際に揺れを体験したら、何が起きたのかを理解するまでに時間がかかることでしょう。日本で生まれ育っていれば子供のころから園や学校で定期的に防災訓練があり、揺れの後には余震、火災、津波といった2次災害のリスクがあることを含めて災害時の行動や知識を身に付けていますが、その経験のない外国人は、適切な避難行動が取れずに被害に遭ってしまうことも考えられます。日本人なら誰でも知っている「避難所」についても情報が届かないことで、誰に頼ればよいのかわからず、大きな不安やストレスを感じることでしょう。

普段から交流を行い、お互いの理解を深めましょう。

マンションに外国人の方がお住まいなら、管理組合・自治会・防災組織を通じて災害時の行動について周知していくことが重要です。できれば、ポストに防災に関するチラシや冊子を投函するだけでなく、防災勉強会を開催し、外国人との交流を図る機会にしていただくと良いと思います。いきなり防災の話から進めなくても、ごみ出しや廊下などの共用スペースでの振る舞いなど日常生活でお互いに困っていることがあれば相談して、段階を経て防災の話に発展していくと自然に受け入れられるのではないでしょうか。

日ごろからお互いに助け合える関係を築くのは外国人であっても同じです。お互いの生活文化、習慣への理解を深めてそれぞれの立場で災害時の役割について考えられると、外国人の方も災害対応の担い手として頼もしい存在になると思います。このほか、外国人支援のための防災訓練を東京都生活文化局が行っていますので、参加を促すこともよいでしょう。防災訓練への参加を促すことで外国人を考慮した防災・減災対策が、地域レベルで広がっていくことが期待できます。

音声翻訳アプリを活用して、情報提供に役立てましょう。

交流を深めようにも機会がない、言葉の壁があるというのであれば、スマートフォンに翻訳アプリを入れておくというのも一案です。私がお勧めするのがVoiceTra(ボイストラ)です。日本語で話しかけると外国語に翻訳してくれる音声翻訳アプリです。翻訳できる言語は31言語で、ダウンロード、ご利用もすべて無料です。また、政府は外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」を開発しています。「Safety tips」とは外国人旅行者が安心して旅行できるよう、平成26年10月から観光庁が提供を開始した外国人旅行者向け災害時情報提供アプリです。対応言語は5言語(英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語・日本語)で国内における緊急地震速報及び津波警報、気象特別警報、噴火速報をプッシュ型で通知できる他、周囲の状況に照らした避難行動を示した避難フローチャートや周りの人から情報を取るためのコミュニケーションカード、災害時に必要な情報を収集できるリンク集等を提供しています。

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こうしたアプリを紹介するほか、最寄りの観光協会、大使館などに相談することを伝えるのも有効です。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。