2021年6月号「マンション防災訓練(地震)」

2021年は東日本大震災から10年、熊本地震から5年。まるであの時を忘れないようにと警告するかのように2021年2月13日に福島県沖で最大震度6強の地震が起き、宮城県沖でも2021年3月20日と2021年5月1日に2回最大震度5強の地震が発生しました。さらに、熊本県でも2021年5月6日に最大震度4の地震が発生するなど、被災した地域の方にとってはあの時を思い出すような恐ろしさがあったと思います。

さて、2012年に執筆を始めたコラムも早いもので10年になります。その中でマンションにおける防災訓練についてあれこれ紹介して参りました。首都圏では直下型の地震がいつ起きてもおかしくないと言われていますから、ここらで気を引き締めて地震対策を向上させるべく、あらためて地震防災訓練の重要なポイントをお伝えしたいと思います。

災害発生時に生じる、マンション特有の課題をイメージしましょう

2021年4月号でもお伝えしたようにひとたび災害が起きると、応急対応から復興まで長きにわたり様々な措置を講ずることになります。にも拘らず訓練で取り上げる項目は限定されていて、しかも毎年内容が同じというマンションが少なくありません。

まずは地震動がマンションにどのような被害をもたらすのか、マンション居住者はどのような行動をするのか、どのようなことで混乱が生じるのか、マンション特有の課題はなにかをイメージしてみましょう。

地震発生直後からの、いわゆる初動だけをとっても下記に示すように訓練で押さえておきたい検討課題は山ほどあります。

(1)対策本部の設置場所と対応者(担当者がいない、少ない場合の対応も)
(2)安否確認および被害状況の確認(在宅、1階に降りる、外の敷地内、避難所などに散らばる居住者の安否や室内の被害をどう確認する?)
(3)施設、設備の使用禁止・使用制限の周知方法は
(4)行政を含む広域および地元の災害情報の入手方法と伝達、共有方法は?
(5)閉じ込め者の救助(エレベーター内と各住戸内)方法は?
(6)負傷者を応急手当する技術、備品、知識は十分? 医療機関などへの搬送方法は?
(7)居住者の困りごとにどこまで対応できる?トイレ、照明、携帯の充電他
(8)要配慮者と支援者・団体をどうつなげる?
(9)1階に滞留する居住者をどうする?
(10)災害対策本部の要員以外にどれだけの対応スタッフが必要?

強調してお伝えしたいこととして、訓練と実際で大きく異なるのが一斉に1階に降りてくる居住者の対応です。担当者はこうした居住者のあらゆる質問や要請を受けている状況をリアルにイメージできているでしょうか。もしかしたら、居住者の対応で迅速にすべき安否確認などの対策が講じられない事態に陥るかもしれません。しかも、担当者だけでは手に負えない様々な活動に対して即座に協力者を募ることができるのか、これも大きな課題です。マンションでは人が大勢いることが災害時に毒にも蜜にもなるのです。

災害時に統率の取れた活動をするためにもできるだけ多くの居住者に参加してもらうこと、そして一つ一つの課題を確実に克服していくために訓練項目を挙げ、それを達成する計画を練り、実行していくことが求められます。首都直下地震が起きるまでの限りある時間の中で、可能な限り居住マンションの災害時の課題を克服し、被災に備えましょう。

国崎 信江氏プロフィール/危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

【主な経歴】横浜市生まれ。女性や生活者の視点で家庭、地域、企業の防災・防犯・事故防止対策を提唱している。講演、執筆、リスクマネジメントコンサルなどの他、文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員」、東京都「震災復興検討会議」委員などを務める。現在はNHKラジオ マイあさ!の「国崎信江の暮らしの危機管理」のコーナーやテレビ、新聞などで情報提供を行っている。著書に『地震の準備帖―時間軸でわかる心得と知恵』(NHK出版)『サバイバルブック―大地震発生その時どうする? 』(日本経済新聞出版社)『マンション・地震に備えた暮らし方』(エイ出版社)『これ1冊でできる!わが家の防災マニュアル』(明治書院)などがある。