国崎信江氏プロフィール

内閣府「中央防災会議首都直下型地震避難対策等専門調査会」専門委員、土木学会の「巨大地震災害への対応検討特別委員会」委員などの経験から、危機管理アドバイザーとして、現在は文部科学省「地震調査研究推進本部政策委員会」委員、消防庁「地域防災計画における地震・津波対策の充実・強化に関する検討会」委員、気象庁「緊急地震速報評価・改善検討会」委員を兼任。全国で防災・防犯対策の講演を行う傍ら、各メディアにも多数出演し、防災・防犯情報に関する啓蒙活動に注力。『マンションみんなの地震防災BOOK』(株式会社つなぐネットコミュニケーションズ発行)をはじめ著書多数。

東日本大震災発生から1年を経た今、首都直下型地震に関する報道も少なくない状況下で、マンション購入希望者の方々も「どういった観点からマンション選びをすればいいのだろう」とお考えではないでしょうか。首都圏に特化して分譲マンションを提供している坂入産業としても、自社が提供するマンションの入居者の安全をいかにすべきか検討していく上で、地震災害についてのエキスパートである国崎信江氏を迎え、お話をうかがいました。【坂入産業参加者】設計部 部長 中村行男、営業部 課長 佐川晶、企画部 係長 武藤淳

司会:
最近、首都圏での地震発生に関する報道が増えているようですが、実際に首都直下型地震が発生するという情報の信憑性についてうかがえますか?
国崎:
占いや予言などとは全く異なり、科学的なデータと根拠を踏まえた上で、東大地震研究 所が「首都直下型地震の発生確率は4年以内に70%」そしてその際の震度が7程度と予測しています。現在は直下型地震が「来るか来ないか」ではなく、「いつ来るのか」という状況にあるのです。東日本大震災以降、地殻がかなり不安定になっており、これまでの地震研究とはことごとく異なる動きやズレが生じています。首都圏での直下型地震以外にも、どのような地震が起きてもおかしくない状況です。
司会:
首都圏に直下型地震が発生した場合に、どういった状況が発生すると政府では想定しているのでしょうか?どういった議論が成されたのでしょうか?
国崎:
委員会では、まず地震が発生した際に都内にどういった被害が起こるのか、中でも避難者対策や帰宅困難者について集中的な討議を行いました。その上で、首都圏の至る所に帰宅困難者が溢れることが想定され、具体的には全体で約650万人、都内では約390万人、23区内で約310万人と数字をはじき出しました。
司会:
それだけの人数が動くと、どのような問題が起こるのでしょうか?
国崎:
たとえば、コンビニエンスストアの商品やトイレの不足、さらには正しい情報を伝達するための方法など、さまざまな問題が生じます。それらの問題を出し尽くした上で、災害時に急いで動くのは危険だという結論に達しました。とはいえ、一定期間移動を開始しない方針ではありますが、時間差で帰宅行動を開始してもらうことで混乱を避けようという考え方です。そのための帰宅ルートや情報をどのように得るのか、またどういった装備が必要になるかは個々で検討しておく必要があるでしょう。
司会:
それでは、もし都心で大震災に遭遇した場合、どう対処すればよいのでしょうか?
漠然とした質問で大変恐縮ですが、たとえば仕事中のときは如何でしょうか。
国崎:
職場で勤務中であろうと、買い物中であろうと、家にいようと、基本的な行動としてはまず"身の安全を守る"ということが最優先です。心情的に家族の安否確認をしたい気持ちもわかるのですが、災害発生後、揺れが収まったからといって安心してはいけません。まずは"24時間をどう生き延びるか"を考えること。なぜなら、24時間以内に津波や土砂災害が発生しますし、火災なども発生する可能性もあります。そういった二次災害から生き延びることに徹する必要があります。とことん、"自分のみを守ること"が大切です。自分の身の安全が確保できた上で、家族や職場の同僚の安否確認をすればいいのです。生きていれば必ず会えるのですから。
佐川:
そうしますと、具体的にはどういった行動をとればいいのでしょうか?職場にいた方がよいのか、家に帰った方が良いのか…。
国崎:
時系列で整理すると、まず揺れた直後は飛来落下物から離れること。高層建築のオフィスやマンションの場合、低層階であればテーブルの下に隠れるのも有効かもしれませんが、高層階の場合は家具が単に倒れるだけでなく、横滑りします。高層階では、家具の下に潜ってどんなに身の安全を守ろうとしても一緒に滑るんです。
オフィスやマンションの強化ガラスがいくら強くても、横滑りした家具がガラスに当たれば、家具もろとも外に放り出されることだってあり得るのです。高層階では、あれば固定されている丈夫なものにつかまるのが有効です。このように対応策は階によっても異なるので、つねに自分が生活している階、働いている階を意識しておくことも重要ですね。
佐川:
広いところで非難するまでが危険ということでしょうか。それであれば避難しないほうが良いんでしょうか。
国崎:
ここの建物が安全だと思えれば、外へは出ない方がいいですね。それに屋外の方がリスクが高いのです。建築物の構造については耐震の基準がありますが、非構造部材については耐震基準がないんです。ですから、ガラス片、タイル片、コンクリート片といった非構造部材が飛来落下物として落ちてくる危険性があります。
子供の頃の避難訓練で校庭に集まった経験によるものかもしれませんが、いざ地震のときは、自然と広場へ避難しがちですよね。
やはりそのときの状況判断をして、何がリスクなのかを理解できるぐらいの知識を付けておいた方が良いと思います。屋内に居た方がいいのか、外へ出た方が良いのかは、講演でもよく訊かれるのですが、その答えは耐震性があるかどうかなので、もし戸建てに居る場合には耐震性がなければ、すぐに外へ出た方が救われる可能性がありますし、居住空間によって変わってきます。
司会:
マンションと戸建てによって、防災対策は違うのでしょうか?
国崎:
マンションの最大のメリットは、自分の防災意識が高い/低いに関係なくデベロッパーさんがある一定の耐震基準の元、消防法の設備や構造をしっかりやってくれているんですね。初めからこの地盤にあう基礎はこうだとか、杭はこれだとか、すべて科学的に計算してくれているわけです。後から防災意識が高まったという方でも、自分の部屋だけ対処すればいいんです。
しかし戸建ては自分の防災意識がそのまま反映されるわけです。あとからこの家の地盤が…となっても簡単にはやりなおせないですよね。
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